排尿トラブルの診断、治療、経過観察において、
「残尿量の測定」は大変重要な地位を占める検査です。

「残尿」とは、排尿直後になお膀胱内に残っている尿のこと。
従来の残尿量検査では、尿道口からカテーテルという細い管を挿入することで
体外へと導尿していましたが、最近ではエコー検査(超音波による診断)が用いられるようになりました。

残尿量のエコー診断ができるようになった事で
患者さんへの精神的・肉体的負担が軽減し、医療だけでなく
介護の現場でも変革が起きています。

今回は、エコーによる残尿測定方法とそのメリットについてまとめました。

そもそもエコーとは

エコー(超音波)とは、人間の耳には聞こえない高い周波数の音のことです。

ヒトには聞き取れないというだけで、コウモリやネズミが互いにコミュニケーションを
取るときなど、自然界ではごく当たり前に使用されいる音であり、レントゲンのように
被爆することもありません。妊娠中のお腹の検査にも使われているほど
安心、安全な音波です。

エコー検査とは

エコー検査では、検査したい対象物に超音波を当て、そこから
返ってくるエコー(反射波)を画像化します。
反射派の波形や画像を目視・データ化することで、どのような異常が起こっているのかを
診断することができます。

エコーで残尿量を測定する方法

まずは体表にジェルを塗り、プローフと呼ばれる探触子を腹部(膀胱の上、恥骨上部)に密着させます。
プローフから膀胱へと超音波を当てることで膀胱の画像を取得し、
得られたデータから膀胱の縦、横、奥行の長さを測定します。

簡潔に説明すると、膀胱の縦×横×奥行×0.52という計算で残尿量を測定は測定できますが、
実際にはもう少し複雑です。
膀胱の最大前後、最大左右、最大上下径、横断面積、縦断面積などから、
楕円体の体積の公式などを駆使して求めた膀胱の体積によって、残尿量を判定しています。

エコーで残尿量を測定するメリット

残尿量を測定するとき、以前はカテーテルという管を尿道口から膀胱まで挿入し、
導尿によって体外に排出された量を目視していました。

しかしこの導尿方法では、患者さんに精神的・肉体的な不快感を与えるだけでなく、
カテーテル挿入時に尿道や膀胱を傷つけ細菌を侵入させてしまうなど、
痛みや尿路感染症の危険性をも伴うものでした。

一方、エコーによる残尿測定は短時間で済み、かつ体内に器具を入れる必要がないため
安心安全です。お腹の上から簡単に残尿の有無を確認することができ、
非常に優れた測定方法だと言えます。

エコーで検査できるのは残尿量だけではありません。
腎臓や前立腺など、排尿に関する臓器全般の異常も見つけることができるため、
結石や腫瘍の発見などにも活用されています。

残尿測定器

最近では、残尿測定専用の超音波検査機器も開発されました。

例えばポケットサイズの膀胱用超音波画像診断装置「リリアム」などは、
残尿量がすぐその場で簡単に測定できる上、長時間にわたって
尿量の変化を測定しつづけることもでき、細やかなケアが可能になりました。

排尿障害を抱えている人の中には、脳が発するおしっこのサインを
自覚できない方もいます。また、要介護判定を受けた高齢者の半数近くがなんらかの
排尿トラブルを抱えており、彼らのケアにどう取り組むかが大きな課題となっています。

そんな中、残尿測定器を活用することで失禁を防げるようになったり、
おむつや尿道カテーテルを外せる方も増えています。患者さんの生活の質を高め、
かつ介護者の負担軽減にも役立つ残尿測定器は、今後のさらなる普及が期待されています。

残尿量の目安について

膀胱内に尿が残っているかどうかは、残尿感を感じる・感じないとは
関係ありません。実際に残尿がなかったとしても、
何らかの病変があれば残尿感を感じてしまいます。

排尿直後の膀胱内には数ml~15mlほど尿が残っているのが普通です。
治療の対象となるのは50ml以上の残尿があるときで、その場合は
膀胱炎などの尿路感染症、前立腺炎、膀胱下垂、その他の病気などが疑われます。
これらを発症していると、実際の残尿量が15ml以下でも強い残尿感を感じることがあるのです。

逆に神経因性膀胱や前立腺肥大症などでは、
残尿感を感じていないにも関わらず、膀胱からは多くの残尿が検知される場合もあります。

残尿感や頻尿、排尿痛、血尿、失禁などが続くようであれば、
すみやかに泌尿器科を受診し、早期の診断、治療に取り組みましょう。