「血尿」とは文字通りに「尿に血液が混じっている」状態のことです。
肉眼ではっきりと血液の混入を確認できる血尿もあれば、
顕微鏡などで赤血球の有無を調べなければ発見できない血尿も
ありますが、血尿の原因の多くは膀胱炎や尿路感染症によるものです。
一般的に、残尿感や排尿痛などを伴う血尿は良性の病気であると言われ、
血尿のみの場合はガンなどの悪性腫瘍である可能性が高いと言われています。
しかし、残尿感などの有無にかかわらず、
一度でも血尿が出た場合はすぐに泌尿器科を受診すべきです。血尿が出た時点で
命に関わる病気が進行してしまっている場合もありますので、
必ず精密検査を受けて原因を突き止めましょう。
今回は、血尿と残尿感を併発している場合について
どのような病気が考えられるのか、その症状と対処法をまとめました。
- 血尿と残尿感から考えられる病気
急性膀胱炎、慢性膀胱炎
血尿は膀胱炎の代表的な症状のひとつです。
細菌が膀胱内で炎症を起こすと、膀胱壁の粘膜が荒れて爛れてしまい、
そこから出血した血液が尿の中に混入します。
血尿は膀胱炎が悪化、もしくは重症化しているしているサインですので、
早急に泌尿器科を受診して抗生物質を服用しましょう。
膀胱炎では、血尿以外にも複数の症状があらわれます。
代表的な症状は下記のとおりです。
- 残尿感
- 頻尿
- 排尿痛
- 尿の濁り、白濁
ちなみに「尿の濁り」とは血尿のことではありません。
血尿だと赤系、ピンク系、茶色系、褐色系などに
尿の色が変化しますが、濁りとは白っぽく、透明感のない尿のことです。
濁りの原因は、
- 炎症によって剥がれた膀胱の粘膜
- 細菌の死骸や、細菌を攻撃したあとの白血球
- 炎症部分からの分泌液
などであり、これらが尿に混じって排出されることで白っぽい色となります。
尿の濁りは初期から重症まで、どの段階の膀胱炎でも見られます。
出血性膀胱炎
子供などの低年齢層によく見られる膀胱炎です。
症状は急性膀胱炎とほぼ同じで、
- 残尿感
- 肉眼的血尿
- 排尿痛
- 頻尿
などですが、発熱などの症状も見られることがあります。
その場合、たいていが高熱ではなく微熱です。
出血性膀胱炎のおもな原因は
- ウイルスや細菌による感染症、
- 抗がん薬投与の副作用
- 食べ物や薬のアレルギー症状
などですが、健康的な子供が発症する場合は圧倒的に
ウイルス(特にアデノウイルス)感染によるものが多いです。
出血性膀胱炎の治療薬はありませんが、ほとんどの場合は10日間ほどで
症状ががおさまり、自然治癒します。
また、細菌性の膀胱炎や尿路感染症と区別がつくまでは、抗生物質を処方されることもあります。
子供の場合は泌尿器科、もしくはかかりつけの小児科を受診しましょう。
治療後も再発防止のために、普段から水分を多めに摂取しましょう。
尿道炎、前立腺炎
尿道炎のおもな原因は、性行為による微生物感染症です。
淋菌やクラミジアが原因菌の多数を占めています。
尿道に痒み、痛み、腫れが生じ、膿や分泌物が尿道口から
排出され、血尿、頻尿、排尿痛、残尿感なども発症します。
前立腺炎は、大腸菌などの細菌感染、結石や前立腺肥大症などが原因となって
発症する感染症です。発熱とともに前立腺が大きく腫れ上がり、残尿感、頻尿、
排尿時痛、血尿などを生じます。
尿閉(まったく排尿ができなくなってしまうこと)や38℃以上の高熱を伴う場合は
早急に泌尿器科を受診しましょう。
尿路結石
尿路結石とは、尿の通り道のどこかに結石が詰まることで
引き起こされる病気です。おもに20~40代の男性、閉経後の女性が発症し、
激しい下腹部痛、血尿、背中や背中の痛み、吐き気などを引き起こします。
カルシウム不足や体内水分量の不足も結石の原因となりますので、
一日1~2ℓの水分補給と、カルシウムを多く含んだ食事を心掛けることが大切です。
腎癌ガン、腎盂尿管ガン、膀胱ガン、前立腺ガン
これらの悪性腫瘍の症状は、人によって様々です。
血尿は出るものの、残尿感や頻尿などの症状はないケースや、
血尿が出てかつ頻尿や残尿感を感じるケースもあります。
尿路のどこかに結石があったり、膀胱周囲の血管に寄生する住血吸虫(寄生虫の一種)に
感染していたりすると、慢性的な刺激によってガンとなることがあります。
突発性腎出血
腎臓~尿路間で発症する、原因不明の出血です。20~30代の若年層に多くみら
れる病気で、膀胱炎、尿管結石、膀胱ガンや糸球体腎炎などを併発している場合もあります。
尿路結核
結核菌が肺から腎臓、腎盂、尿管、膀胱、尿道にまで
感染を広げている状態です。腎機能障害を起こし、排尿痛、頻尿、残尿感、血尿、濁尿など、
膀胱炎と同じ症状を何度も繰り返します。