大人のおねしょ(夜尿症)は決して珍しいものではありません。成人男女の0.5%以上が大人のおねしょを経験していますが、羞恥心から表面化しないだけなのです。
また、身体の成長にともなう子供のおねしょとは違い、大人のおねしょは体からのSOSサインだったというケースもあります。重大な病気が隠されていたり、精神面でも肉体面でも生活の質を低下させる恐れがあるため、適切な治療を受けることが大切です。
今回は大人の夜尿症の原因について、詳しく解説していきます。
- 大人の夜尿症の原因
1.心因性の夜尿症
最も多く見られるのは、ストレスなどによる心因性の夜尿症です。
不安感や緊張感など、強いストレスによって自律神経が乱れると、就寝中の尿量をコントロールする抗利尿ホルモンの分泌量が低下し、一時的におねしょを引き起こしてしまう場合があります。また、ストレスによって膀胱が勝手に収縮するため、膀胱に溜めておける尿量が減り、就寝中に漏らしてしまう場合もあります。
2.抗利尿ホルモンの不足
子供の頃のおねしょが成長後も続く場合は、抗利尿ホルモンの分泌量が不足している怖れがあります。原因ははっきりしていませんが、先天的な遺伝や体質、病気などが要因として考えられます。この場合、薬で抗利尿ホルモンを補ったり、睡眠ホルモンのメラトニンを服用することで夜尿症を抑えられるケースもあります。
3.加齢や出産によるもの
加齢や出産によって排尿に関わる筋肉が衰えると、夜間の尿漏れを引き起こしてしまう場合があります。これらのケースは、排尿括約筋や骨盤底筋などを鍛える「骨盤底筋体操」で改善することができます。
4.お酒の飲みすぎ、水分の摂りすぎ
アルコールの利尿作用によって、泥酔したまま無意識のうちに失禁している場合があります。しかし、一時的なおねしょは夜尿症とは呼びませんので、とくに心配する必要はありません。また、カフェイン入りの飲料や水分の摂りすぎなどが原因となっている場合もあります。
5.病気による夜尿症
体のどこかにある基礎疾患の諸症状として夜尿症があらわれる場合もあります。
- 睡眠時無呼吸症候群
睡眠中に呼吸が止まる病気です。眠りが浅くなるため、抗利尿ホルモンの分泌に悪影響を及ぼすことがあります。
よく寝たはずなのに1日中眠気を感じる、家族からいびきがうるさいなどと言われた場合は、睡眠時無呼吸症候群を疑いましょう。
- 夢遊病
夢遊病の正式名称は「睡眠時遊行症」です。睡眠中に脳の一部が覚醒して意識がないまま行動するため、夜尿の症状もよく見られます。
- 神経系の病気
排尿は脳や神経によって制御されているため、脳疾患や神経疾患が夜尿症を引き起こすことがあります。
具体的には脳卒中、脳腫瘍、多発性硬化症、脳血管障害、パーキンソン病、脊髄損傷、脊柱管狭窄症などが挙げられますが、この場合は夜間だけでなく、昼間にも排尿トラブルがみられます。
- 糖尿病
糖尿病の場合、オシッコから甘い匂いがする、のどが渇く、だるい、手足がしびれるなどの症状も併発します。糖尿病になると多飲多尿となり、おねしょをする可能性も高くなります。
- 尿崩症
原因はよく分かっていませんが、抗利尿ホルモンがうまく作用しなくなり、日中・夜間に限らず尿量が増えてしまう病気です。異常な喉の渇き、尿量の増加などがみられ、夜尿症をともなう場合もあります。
- 膀胱や前立腺の病気
過活動膀胱、膀胱炎、膀胱がん、膀胱結石、尿路結石、尿道狭窄症なども夜尿症を引き起こします。男性のみの病気としては、前立腺肥大症、前立腺がんなども夜尿の原因となります。これらは夜間だけでなく、日中にも頻尿、尿漏れ、尿意切迫感、血尿、残尿感などを引き起こします。
- 子宮内膜症など、女性特有の病気
子宮や膣は膀胱や尿道の隣にあります。女性特有の病気は膀胱や尿道に刺激を与え、悪影響を及ぼします。
6.怪我による夜尿症
骨盤骨折などで神経に障害が残った場合、夜尿症や尿失禁などを引き起こすケースもあります。
大人のおねしょは決して恥ずかしいことではありません。必要以上に悩むことで症状を悪化させないようにしましょう。
また、どのタイプの夜尿症も治療にはある程度の時間が必要となります。まずは病院を受診して原因を特定し、適切な治療に取り組むことが大切です。