• 夜尿症とは?

大人のおねしょは「夜尿症」と呼ばれており、一次性と二次性のものに大きく分けられます。

  • 一次性の夜尿症…子どもの頃のおねしょがずっと続いていること。夜尿症の8割を占める
  • 二次性の夜尿症…1度は治ったおねしょが再発すること。あるいは、5歳以上でおねしょをすること

おねしょは本来3~4歳頃には治りはじめて、遅くても小学6年生頃までには消失します。しかし、大人でも何らかの基礎疾患が引きがねとなって難治性のおねしょを発症したり、先天性の遺伝が原因で突然再発することは珍しくありません。

もし5歳を過ぎても週3回以上のおねしょがあるなら、治療が必要な病態だと診断される可能性が高くなります。

成長過程の子供とは違い、大人のおねしょはストレス社会が生み出した現代病のひとつとも捉えられています。それほど精神面が原因となっているケースが多いということですが、中には重大な病気が隠されている場合もあるので注意が必要です。

今回は、大人の夜尿症を診断するための検査法、治療法などについて、詳しくご紹介します。

  • 夜尿症の検査

夜尿症の検査は、

  • おねしょの状況や重症度を把握すること
  • 夜尿症のタイプや原因を明らかにし、基礎疾患がないかどうかを調べる

のふたつを目的に行われます。

  • 問診…過去のおねしょ歴、家族の病歴、多飲多尿の有無などを確認します。特に腎尿路疾患は念入りにチェックされる
  • 検尿…尿路感染症やタンパク尿、潜血尿がないかどうかを確認する
  • 夜間の尿量測定…おねしょした時のおむつの重さを測定します。超音波による持続尿量モニターがあれば、下腹部にセンサーを貼って眠るだけで尿量測定ができる場合もあります
  • 血液検査…腎機能のチェックやホルモン量の測定を行う
  • 膀胱容量の測定…尿流を測定する専用トイレが、患者の排尿機能を自動的に評価する
  • 残尿量の測定…超音波検査(エコー)やカテーテルで膀胱内の残尿量を測定
  • レントゲン検査…脊髄疾患や尿路疾患の異常をチェックします。

その他、症状に応じてMRIやCTスキャンなども行われます。
また、男性なら前立腺の検査、女性なら出産の有無を問われることもあります。

このように、おねしょの重症度、夜尿以外の症状を問診することによって、医師がどのような検査をするのかを判断してくれます。基本的には痛みを伴わない検査ばかりですので、安心して泌尿器科を受診してください。

  • 夜尿症の治療法

大人のおねしょの治療法は、大きく3つに分けることができます。

1.夜尿アラーム療法

おねしょを感知するとブザーが鳴る機器をパンツに取り付けます。ブザー音によって尿意を感じた際に起きられるようになったり、反射的におしっこを止められるようになります。膀胱に尿を溜める力をつけ、朝まで排尿を我慢できるように習慣づける治療法です。

ただし、効果が出るまでには平均1~3か月以上かかります。有効率は約70%と高い治療効果を発揮しますが、10~30%の方がこの治療から脱落しているという報告もあるため、家族の協力や本人の強い意志が必要となります。

2.薬物療法

基本的には「抗うつ剤」「抗利尿ホルモン剤」「抗コリン薬」の3つを使用します。

  • 抗うつ剤…尿量を減少させる効果があります。
  • 抗利尿ホルモン剤…夜間の尿量が多い場合、尿量を調節する抗利尿ホルモン剤を補うことで改善を図ります。
  • 抗コリン薬…膀胱が小さい方には抗コリン薬が処方されます。自律神経に作用し、排尿を抑制したり、膀胱の容量を増加させることができます。
  • メラトニン拮抗剤…昼寝時にもおねしょをする方、睡眠リズムが乱れているタイプには、睡眠改善薬であるメラトニン拮抗剤などが処方される場合もあります。
  • 漢方薬…抑肝散や加味逍遥散など、夜尿に効くとされる漢方を処方する場合もあります。体の冷えを改善するなど、体質に合わせた処方が可能です。

このように、様々なお薬を組み合わせながら薬物療法は行われます。
しかし、服用を中止することによっておねしょを再発したり、食欲不振、嘔吐、眠気などの副作用が出る場合もあります。

3.生活指導法

夜尿症の治療の基本は、生活習慣の改善です。
規則正しい生活を送り、水分・塩分の摂りすぎに気を付けましょう。寝る前には必ずトイレに行く、お酒やカフェインを控える、体が冷えないように気をつけるなどで、大幅に改善できる場合もあります。家族も協力して、一緒に生活習慣を見直していくことが大切です。