多くの女性が妊娠初期に経験するという頻尿や残尿感。

妊娠中の頻尿は、胎児を守り育てるために
必要不可欠な身体の変化ともいえますが、
なかには妊娠とは関係のない病気で頻尿になっていたというケースもあります。

今回は妊娠中の頻尿や残尿感の原因、対策、
注意すべき点などについてをまとめました。

妊娠による頻尿・残尿感の原因

  • 妊娠すると腎機能が活発になる

腎臓は血液をろ過し、体に不要な老廃物や塩分を
尿として排出してくれる臓器です。また、体に必要な栄養素を再吸収する、
血圧を調節するなどの役割も果たしています。

しかし妊娠中は体内の血液量が増加します。妊娠16~24週目あたりにはいつもの1.5倍にまで膨れ上がります。

その結果、腎臓で処理しなければならない血液量が多くなりすぎて負担がかかり、
腎臓のろ過機能が低下してしまいます。

処理の追いつかない老廃物を必死に流し出そうとする腎臓は、
尿の排出量を増やし、これが頻尿の原因になるのです。

  • 膀胱が圧迫される

膀胱は子宮のすぐ下にあるため、子宮が膨らむにつれて
膀胱は圧迫され変形していきます。膀胱が正常な形を保てなくなると、
尿を溜められる容量が減少し、頻尿に繋がります。

膀胱が充血し、尿が溜まっているという刺激に対して敏感になる、
という妊娠中の体の変化も原因のひとつです。

  • ホルモンの影響

妊娠すると「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の分泌が増加します。

このホルモンは胎児を育成するのに欠かせないホルモンです。
母親の体温を上昇させ、血流量を上げることによって胎児に栄養を供給します。

しかしこのプロゲステロンは、膀胱~尿道の平滑筋をゆるめる効果もあり、
利尿を促進してしまいます。これが頻尿や残尿感の原因となります。

  • おりものが増加する

妊娠中はおりものが増加します。おりもので汚れたままの陰部を放置しておくと、
そこで細菌が繁殖し、尿道から膀胱に侵入して膀胱炎を引き起こしてしまう可能性があります。

  • 一般的な膀胱炎によるもの

妊娠初期は体調が不安定です。体のだるさなどからトイレに行くのが億劫になり、
尿を我慢してしまうと、膀胱内で細菌が繁殖してしまいます。

妊娠中はホルモンバランスや自律神経の乱れによって
免疫力も低下するため、膀胱炎だけでなく
カンジダ膣炎や腎盂腎炎にも感染しやすくなります。

発生時期の目安

妊娠初期の頻尿は、どのタイミングで始まることが多いのでしょうか。

早い方であれば、妊娠の初期症状として
本来の生理予定日あたりにすぐ頻尿の症状が出始めることもあります。
逆にまったく頻尿にならない方もいて、個人差がかなり大きいようです。

初期から頻尿に悩まれている方でも、妊娠4ヶ月あたりでおさまる方もいれば、
子宮がお腹の方に上がってくる妊娠中期にはおさまる方、
妊娠後期まで頻尿がずっと続くという方もおり、やはり体質に左右されるようです。

症状

  • 残尿感を感じる
  • 排尿時にヒリつくような、ツンとした痛みを感じる
  • 尿に血や濁りが混ざっている

などの症状が見られたら、すぐに病院を受診しましょう。

膀胱炎を放っておくと、腎盂腎炎にまで発展してしまう可能性があります。
腎盂腎炎は、流産、早産を引き起こすこともある恐ろしい病気です。
早期に発見し、早急に治療するということを心がけましょう。

妊娠中の膀胱炎の治療法

妊娠中の膀胱炎の治療にも、普通の膀胱炎と同じく
病院で処方された抗生物質を使用します。

妊娠中の薬使用は控えるべき、という大前提はありますが、
妊娠中にも服用可能な抗生物質はあるのです。

たとえばペニシリン・セフェム系、マクロライド系の抗生物質は
妊娠中の服用でも安全が証明されています。

しかしいくら安全だといっても、妊娠中には何が起こるか分かりません。
抗生物質を摂取することによって、母体や胎児に悪影響が及ぶ可能性も否定できません。

自己判断で勝手に薬を飲むようなことは絶対にやめましょう。
万全をはかるためにも、様子がおかしければ早急に婦人科を受診し、
医師の指導のもとしっかりと服用してください。

水分をたくさん摂取し、面倒でもこまめにトイレに行くなどして、
膀胱炎の予防も心がけましょう。

妊娠時の頻尿対策

  • カフェインの入りの飲料は控える

コーヒー、緑茶、紅茶などに含まれるカフェインには利尿作用があるため、
トイレの回数をさらに増やしてしまいます。

  • 水分の摂りすぎには注意

妊娠中は汗をかきやすくなるため、適切な水分補給が必要ですが、
あまりに過剰に飲みすぎると頻尿や残尿感の原因になります。

  • 体の冷えをとる

胎児をお腹に抱えているため、暑いと感じる女性は多いようですが、
妊婦にとって体の冷えは禁物です。少しでも寒いと感じたら、
防寒対策をしましょう。

夏場のクーラーは設定温度を控え目にし、
腹巻やマタニティーガードルでお腹まわりを冷やさないことが大切です。