「肥満」と「残尿感」には密接な関わりがあることをご存じですか。
肥満は様々な病気を引き起こす要因となりますが、その中でも
「糖尿病」や「睡眠時無呼吸症候群」は排尿トラブルを併発する
大きな原因となります。
今回は、肥満と排尿困難の関係性、糖尿病についての基礎知識、
そして肥満の解消法などについてまとめました。
そもそも肥満とは
「肥満」とは、ただ単に「見た目が太っている状態」を指す言葉ではありません。
内臓脂肪や体脂肪など、さまざまな脂肪が体内に過剰蓄積されている
状態こそが「肥満」であり、一見すると痩せているように見える人でも
「隠れ肥満」は存在します。
体内の脂肪量を測定する機械はこの世に存在しないため、肥満の判定には
BMI(肥満指数)を使用します。
BMI値(Body Mass Index)=体重kg÷(身長m×身長m)で計算し、
日本肥満学会ではBMI22を標準体重、BMI25以上を肥満であると定義しています。
IBMの他にも、肥満判定のために用いられる指数があります。
それが「体脂肪率」です。
体脂肪率(%)=体脂肪量(kg)÷体重(kg)×100で計算し、
BMIが25未満の人でも、体脂肪率が高い場合は「隠れ肥満」と判定されます。
肥満が排尿トラブルを引き起こす原因
内臓脂肪が膀胱を圧迫する
内臓脂肪が膀胱を圧迫することによって、頻尿や残尿感、尿意切迫感などを引き起こす可能性があります。
また、脂肪の重みで垂れ下がった下腹部の圧力が膀胱や尿道を圧迫し、
前立腺肥大症のような尿のキレの悪さや頻尿などを引き起こす恐れもあります。
糖尿病による頻尿
人間の体はブドウ糖をエネルギーとして活動しています。
ブドウ糖が血液に溶け込み、全身に運ばれることで、脳や筋肉や内臓を動かす
エネルギーとなり、生命を維持できるのです。
血液中のブドウ糖は「血糖」と呼ばれます。
「血糖」の量は「インスリン」というホルモンが常に調節しています。
しかし、何らかの理由でインスリンの分泌量が減少したり、
インスリンがうまく働かなくなると、高血糖が続きます(血糖値が
一定の値を超えて高い状態を維持すること)。
このような状態が「糖尿病」です。
糖尿病になると、体は血液中の糖分を薄めようとして、大量の水分を欲します。
つまり、非常に喉が渇いて異常な量の水分を摂取するという症状は糖尿病のサインなのです。
そして、水分摂取量が多くなれば当然尿の量も多くなり、
頻尿や残尿感などを引き起こします。これがいわゆる「多飲多尿」と呼ばれる症状です。
糖尿病による排尿トラブルは、多飲多尿だけではありません。
尿中に糖が排泄されて濁ったり泡立ったりする、、尿から甘ったるい匂いがする、
免疫力の低下により膀胱炎や尿路感染症などの合併症を引き起こすなど、
様々な症状を引き起こします。
さらに糖尿病が進行すると、神経にも障害が及びます。
排尿をコントロールしている末梢神経にまで異常が及ぶと、
尿意などの排尿機能全般が正常に機能しなくなります。
これらの状態を「神経因性膀胱」と呼び、尿意を感じない失禁や
尿漏れなどが発生するため、生活の質が著しく低下する恐れがあります。
基本的に、糖尿病が原因で起こる排尿トラブルの治療方法は「血糖コントロール」です。
食事療法や運動療法、薬物療法などで改善を試みます。
いずれにせよ自己判断での治療は禁物です。必ず医師に相談しながら治療を行ってください。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に舌根部や軟口蓋が垂れ下がってしまうことが原因で
気道が塞がり、呼吸が止まってしまう病気です。
発症する原因は人によって様々ですが、肥満によって付いた首回りの脂肪のせいで
気道が狭くなっていることも大きな原因のひとつとなっています。
睡眠時無呼吸症候群は、夜間頻尿の原因となっている場合もあります。
呼吸が止まる息苦しさで睡眠状態から覚醒してしまうため、
就寝中の排尿をコントロールしてくれる
「抗利尿ホルモン」がうまく働かなくなるからためです。
毎晩トイレのために2回以上起きるようになると、睡眠不足が慢性化して
生活の質が低下する恐れがあります。日中には頻尿が見られず、夜間のみ頻尿になる場合は、
睡眠時無呼吸症候群である可能性も考慮に入れましょう。
睡眠時無呼吸症候群の治療法は人によって様々ですが、肥満の解消、扁桃や鼻の手術、
マウスピースの着用などが有効です。いびきや無呼吸が気になった場合は、
早めに医師へ相談することをお勧めします。
肥満を解消するために
過剰なカロリー摂取を控え、運動などで消費カロリーを増やしましょう。
特に甘い物の摂りすぎ、アルコールの飲みすぎなどは
糖尿病の危険因子となります。
肥満は排尿トラブルだけでなく、様々な生活習慣病を引き起こす原因となります。
運動不足、食べ過ぎ、ストレス過多などの生活習慣を改善し、
健康的な生活を心掛けましょう。