日本排尿機能学会の調査によると、排尿トラブルは加齢とともに増加していく
傾向にあり、特に尿漏れ、頻尿、残尿感などで病院を受診する人は
40代以降から急激に伸びていくそうです。
なぜ40代以降から排尿トラブルが増加していくのか。
その大きな原因のひとつに、加齢による蓄尿量の低下があります。
若い時の膀胱はよく伸びて膨らみやすく、尿をたくさん溜めておくことができますが、
年を取って筋肉や弾力性が失われると、同時に膀胱の伸縮率も低下します。
その結果、尿を蓄えておける量、つまり1回の排尿量が減るため、
代わりに回数が頻繁になるのです。
今回は、40代以上の方々が発症しやすい排尿トラブルと、
その対処法、治療法などを男女別にまとめました。
40代以上の排尿トラブル(男女共通)
- 過活動膀胱
老若男女を問わず誰でも発症する病気ですが、特に40代以降から増加していきます。
過活動膀胱になると、膀胱が過剰・過敏に活動してしまうため、
通常400mlほど溜めておけるはずの膀胱でも
たった100mlほど溜まっただけで強い尿意を感じるようになります。
主な症状は頻尿と切迫性尿失禁です。
切迫性尿失禁とは、急激で強い尿意による失禁のことです。
尿意を感じた時にはすでに遅く、トイレに行くまでに尿漏れを
起こしてしまうというケースもよくあります。
過活動膀胱を改善するには、骨盤底筋を鍛えることが重要です。
骨盤底筋という尿道を締める筋肉が衰えると、
まるで蛇口の栓がゆるんだように膀胱から体外へと尿が排出されてしまします。
骨盤底筋体操を3カ月ほど続け、症状改善に取り組みましょう。
40代以上の男性に見られる排尿トラブルとその原因
男性の排尿トラブルの原因は様々ですが、40代以降に増えてくるのは下記の病気です。
- 前立腺肥大症による排尿障害
前立腺は尿道を包みこむようにして存在しています。
この前立腺が加齢とともに肥大化することにより、尿道や膀胱が圧迫され、
さまざまな排尿トラブルを引き起こします。
原因は今のところ解明されていませんが、男性ホルモンの
分泌量が年齢とともに減少することが
前立腺の肥大化につながっていると推測されています。
前立腺肥大症のおもな症状は、
- 頻尿、夜間頻尿
- 排尿に時間がかかる、勢いがない
- 残尿感
などですが、軽度のものなら薬物での治療が可能です。
しかし重症化させてしまった場合は、外科的手術が必要になります。
前立腺肥大の予防法はまた確立されていません。
ですが、前立腺、膀胱、尿道への刺激を繰り返している人は
肥大しやすくなる傾向があるそうです。
冷え性や座りっぱなしのデスクワーク、アルコールの摂取なども前立腺への刺激に
なると考えられています。規則正しい生活習慣こそが、現状では一番の予防法なのです。
- 排尿後尿滴下(はいにょうごにょうてきか)
排尿後も尿がポタポタとあふれ続けてなかなか止めることができない、
排尿直後に微量の尿が漏れ出して下着を濡らしてしまう。
このような症状を「排尿後尿滴下(はいにょうごにょうてきか)」と呼びます。
年齢を問わず多くの男性が経験する排尿トラブルです。
40代以降は加齢とともに尿を押し出す筋肉が衰えるため、排尿の勢いが弱くなります。
そのため、排出しきれず尿道に残っていた尿が体外へと落ちてくるのです。
排尿後尿滴下に治療薬はありませんが、
骨盤底筋体操を続ければかなり症状を改善することができます。
40代の女性に見られる排尿トラブルとその原因
- 膀胱炎などの病気によるもの
女性にとって急性膀胱炎はとても身近な病気です。
女性は男性よりも尿道が短いため、尿道口から細菌が侵入しやすく、
尿路での炎症を起こしやすいのです。
急性膀胱炎のおもな症状は残尿感、頻尿、排尿痛、血尿ですが、
抗生物質の服用により完治させることが可能です。
- 腹圧性尿失禁による頻尿
腹圧性尿失禁とは、咳、くしゃみ、重い荷物を持ち上げたときなど、
腹部に圧力がかかったときに尿が溢れ出してしまう症状です。
女性は尿道が短いため、腹圧がダイレクトに膀胱・尿道に影響します。
よってお腹に軽く力を入れただけで膀胱・尿道が緩み、尿漏を引き起こしてしまうのです。
また、腹圧性尿失禁は妊娠・出産経験者に多く見られる傾向があります。
加齢とともに骨盤底筋が衰えて尿道をしっかりと締められなくることが
原因のひとつなので、過活動膀胱と同じく、腹圧性尿失禁にも
骨盤底筋体操をおすすめします。
上記に挙げた原因以外にも、更年期障害、尿道症候群、骨盤性器脱、
膀胱結石、糖尿病、子宮筋腫、ガンなどが排尿トラブルを引き起こしている
場合もありますので、まずは医師に相談し、適切な治療を受けましょう。