「五淋散」は排尿痛や残尿感などの苦痛をやわらげ、泌尿器系のトラブルを緩和する漢方薬です。

「抗炎症作用」「血流改善作用」「利尿作用」をもつ自然の生薬を組み合わせることによって、
様々な排尿トラブルの不快感に広く効果を発揮します。

五淋散が向いている人

  • 頻尿
  • 排尿痛
  • 残尿感
  • 濁尿、血尿
  • 病院で排尿トラブルの検査を受けたが特に異常がない人
  • 膀胱炎(急性・慢性)
  • 尿量が少ない
  • 過活動膀胱
  • 慢性尿道炎
  • 尿路結石、腎臓結石
  • 淋病など

五淋散は、これらの症状に悩まされている方におすすめの漢方薬です。

五淋散の成分

五淋散を構成する成分はメーカーによって異なります。
しかし、効果・効能に大きな違いはありません。

基本的には草や木から抽出された11種類の生薬が用いられています。
おもな成分は下記のとおりです。

  • 黄ごん(オウゴン/シソ科コガネバナの根)…抗炎症効果、熱や腫れを取り除く
  • 茯苓(ブクリョウ/サルノコシカケ科マツホド菌)…尿の排出をスムーズにする
  • 沢瀉(タクシャ/オモダカ科サジオモダカの根茎)…同上
  • 車前子(シャゼンシ/オオバコ科オオバコの種子)…利尿作用
  • 芍薬(シャクヤク/シャクヤクの根)…鎮痛作用
  • 甘草(カンゾウ/マメ科カンゾウ属などの根茎 )…同上
  • 地黄(ジオウ/ゴマノハグサ科ジオウ属の根茎)…血流の改善、補血
  • 当帰(トウキ/セリ科トウキ属の植物の根茎)…同上
  • 木通(モクツウ/アケビ科アケビ属の根茎)…利尿作用
  • 山梔子(サンシシ/クチナシの実)…抗炎症作用
  • 滑石(カッセキ/天然の含水ケイ酸アルミニウム) …利尿作用

これらの成分が同時に働く相乗効果で、より生薬の効能を高めます。

五淋散の効果・効能

五淋散は頻尿、排尿痛、残尿感などの症状をやわらげ、 尿路の熱や腫れを取り除き、
尿の排出をスムーズにする効果があります。体力が中程度~少し弱い方におすすめです。

また、利尿作用によって尿量を増加させ、大腸菌などの細菌を膀胱から洗い流し、膀胱炎や尿道炎などを改善します。
血流を促進させることによって下半身を温め、膀胱炎や頻尿の原因となる冷え性も解消します。

補血(低下している血液の量や質を補強すること)にも効果があるため、
月経中の女性の排尿トラブルにも最適です。

ただし、細菌感染による膀胱炎の場合は病院から処方された抗生物質を服用しましょう。
五淋散が効果を発揮するのは非細菌性の排尿トラブルであり、膀胱炎などの基礎疾患を完治させるものではありません。

五淋散の副作用と注意点

漢方薬にも副作用があります。
服用中の薬や持病がある場合には、必ず医師に伝えておきましょう。

  • 甘草を含むその他の漢方薬、グリチルリチン、利尿薬などと同時に飲んではいけません。
    体のむくみや血圧の上昇など、偽アルドステロン症といわれる副作用が出る場合があります。
  • 食欲不振、吐き気、下痢などが副作用としてあらわれる場合もあります。
    胃腸が弱っている時も服用に注意が必要です。
  • 重い副作用は下記のとおりです。
  • 偽アルドステロン症(倦怠感、血圧上昇、むくみ、体重増加、手足の痺れや痛み、筋肉の痙攣、震え、低カリウム血症)
  • 間質性肺炎(から咳、息苦しさ、息切れ、発熱)
  • 肝機能障害(黄疸が見られる、褐色尿、吐き気、発熱など)

これらの症状がみられた場合は、早急に病院を受診しましょう。

  • 妊婦中の女性は服用する前に必ず医師に相談して下さい。
  • 医師の指示どおり、用法用量を守って服用しましょう。

五淋散という名前の由来

「五淋」とは、「石淋、気淋、膏淋、労淋、熱淋」という五つの排尿トラブルを表し、
中国医学ではこれらをまとめて「淋証」と呼んでいます。

淋証は西洋医学でいうところの尿路系疾患の事であり、
大まかな意味合いは次のようになっています。

  • 石淋…尿路結石
  • 気淋…残尿感
  • 熱淋…尿道炎
  • 血淋…血尿
  • 膏淋…尿濁
  • 労淋…おもに疲労による慢性膀胱炎

淋(りん)とは中国医学で「尿がポタポタと途切れ途切れに出る、あるいは尿が出にくいなどの病態」を指す言葉で、
五淋散にはこれら五つの排尿トラブルを改善するという意味が込められています。