尿トラブルの代表的な症状と言えば残尿感・頻尿・尿漏れ・排尿痛ですが、
これらを引き起こす原因として最も考えられるのが膀胱炎です。

膀胱炎は細菌性のもの、非細菌性のものに分けられますが、
細菌性の場合は病院で原因菌の種類を特定してもらい、それに合わせた
抗生物質を服用することで完治させることができます。

抗生物質は原因菌の死滅・増殖の抑制という、膀胱炎の治療において
最も重要な役割を果たします。
それでは抗生物質と併用されることが多い漢方薬は、
一体どのような役割を果たすのでしょうか。

漢方の基本理念

漢方は、細菌性、非細菌性のどちらの膀胱炎にも効果がありますが、
あくまで膀胱炎の症状を緩和・改善するもので、根治を目指すものではありません。
抗生物質と併用することで大きな効果を発揮する生薬だと
考えてよいでしょう。

抗生物質で細菌を死滅させながら、体内の「気」の流れを改善することで、
身体そのものをより再発しにくい状態へと改善していく。それが漢方の役割です。

「気」とは東洋医学で「生命エネルギー」を指しています。
「冷え」や「邪」によって「気」の流れが乱れてしまうと
下腹部に熱がたまり様々な疾患があらわれると考えられています。

気の流れをスムーズにするためには、漢方の利尿作用によって
たまった「熱」「邪」や炎症を流し出すことが重要です。

残尿感に効く漢方薬

  • 五淋散

あらゆる排尿トラブルにおいて、第一選択薬として
(一番最初に処方を試みる薬のこと)用いられる漢方です。
排尿困難、残尿感、頻尿、排尿痛、むくみなどに効果を発揮します。

五淋散の「淋」とは「尿が出にくい、ポタポタと切れぎれに出る」という意味があり、
石淋、気淋、膏淋、労淋、熱淋と呼ばれる膀胱~尿路に関する5つの病態を
指しています。

  • 茯苓(ぶくりょう)
  • 当帰(とうき)
  • 甘草(かんぞう)
  • 芍薬(しゃくやく)
  • 山梔子(さんしし)

などが配合されていますが、基本的に漢方薬は
メーカーなどによって成分の配合が違います。

・猪苓湯(ちょれいとう)

こちらもあらゆる尿トラブルにおいて第一選択薬とされる漢方です。
排尿困難、残尿感、頻尿、排尿痛、むくみなどに効果を発揮します。
解毒作用、抗炎症作用、利尿作用によって原因菌を体外に排出します。

  • 猪苓(ちょれい)
  • 茯苓(ぶくりょう)
  • 沢瀉(たくしゃ)
  • 阿膠(あきょう)
  • 滑石(かっせき)

などが配合されています。

・竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)

ある程度体力のある人に用いられる漢方薬です。
残尿感、排尿痛、残尿感、尿のにごり、おりもの過多、頻尿などに効果を発揮します。
また、自律神経の過緊張や閉経時に頻発する膀胱炎にも効果を発揮します。

  • 竜胆(りゅうたん)
  • 山梔子(さんしし)
  • 甘草(かんぞう)
  • 木通(もくつう)
  • 地黄(じおう)
  • 当帰(とうき)
  • 黄芩(おうごん)
  • 沢瀉(たくしゃ)
  • 車前子(しゃぜんし)

などが配合されています。

・八味地黄丸(はちみじおうがん)

ある程度体力のある方に使用されます。
残尿感、夜間頻尿、尿漏れ、むくみ、腰痛、冷えに効果を発揮します。

特に夜間頻尿・前立腺肥大に悩む方に処方されており、
男性の不妊、女性の月経不順の治療薬としても用いられます。

  • 地黄(じおう)
  • 山茱萸(さんしゅゆ)
  • 山薬(さんやく)
  • 沢瀉(たくしゃ)
  • 茯苓(ぶくりょう)
  • 牡丹皮(ぼたんぴ)
  • 桂皮(けいひ)
  • 附子(ぶし)

などが配合されています。

  • 清心蓮子飲(せいしんれいしいん)

胃腸虚弱者に処方される事が多い漢方です。残尿感、排尿通、頻尿から疲労、
いら立ちなどにも効果を発揮します。

八味地黄丸を服用すると胃が荒れてしまう方や、普段から
胃腸が弱い方に処方されます。

副作用と注意点

漢方は必ず用法・用量を守って服用しましょう。
体質によっては強い副作用が出ることもあります。

また、漢方薬にはそれぞれ同時に服用してはならない成分があります。
重大な副作用を引き起こさないようにするためにも、
注意事項はしっかりと確認してください。

漢方薬では、治療の過程で一時的に病状が悪化する「瞑眩(めんげん)」が
あわわれる場合もあります。副作用と瞑眩の違いを
素人では判断できませんので、違和感を感じたら必ず医師に確認して下さい。

漢方の代表的な副作用は以下の通りです。
これらの症状が現れた場合はすぐに服用を中止し、医師に相談しましょう。

  • 間質性肺炎

漢方薬を服用し始めてから2~4週間後に
息苦しさ・空咳・発熱などの、風邪に似た症状が起こる可能性があります。

  • 偽アルドステロン症

利尿作用によってカリウムが体外に排出されると、
高血圧やむくみを引き起こす可能性があります。
「甘草」という成分が含まれている場合は特に注意しましょう。

  • 尿量の減少

麻黄という生薬が引き起こす副作用です。
排尿時にうまく括約筋が緩まず、尿を出しにくくなります。
高齢の男性は特に注意してください。