医療や介護の現場における「アセスメント」という言葉の意味は、
- 患者さんや利用者さんが何を求めているのかを正しく把握すること
- どんな生活環境からその問題が生じているのかを確認すること
- 治療や援助を行う前に、問題点を把握し評価・検討を行っておくこと
などを指しています。
つまり、患者さんの症状分析から治療方針の決定まで、
ひとりひとりに合わせたケースバイケースの治療を
行うために必要な指針を、聞き取り調査や病理検査などで
しっかりと把握しよう、という意味です。
排尿や残尿に関するアセスメントも同じです。
排尿トラブルに見舞われたとき、対処療法のみで治療を終わってはいませんか?
残尿感の根本的な治療、そして残尿の原因になっている生活習慣の改善を
おこたると、何度も同じ事をくりかえし、ふたたび感染症や尿路結石になってしまいます。
また、脊髄損傷、脳梗塞、パーキンソン病、ガン、手術後の後遺症など、
重篤な病気によって排尿困難が生じている場合もあります。
残尿感から解放されただけで治療を終えてしまわず、継続的な残尿測定などや
健康的な生活習慣を心がけましょう。
生活全般を注視することで再発防いだり、隠された疾患を見つけたりすることができます。
医師だけに頼らず、自分自身でもしっかりと排尿アセスメントを
行っていくことが大事です。
残尿感の基礎知識について
以下は正常な排尿・蓄尿機能の指針です(成人男女)。
- 1日の排尿回数は4回~8回
- 1回の尿量は平均200ml~400ml
- 高齢者の1回の尿量は100ml~150ml
- 尿意を頻繁に感じるかどうか
- 失禁の有無
- 残尿感の有無
- 夜間のトイレ回数が少ない(夜間頻尿ではない)
- 尿意を感じても、ある程度までは我慢ができる
一般的に、健康な成人男女が尿意を感じ始めるのは
膀胱に200mlほどの尿が溜まった時だとされています。
膀胱にためておける最大尿量は平均約500mlですので、
200mlの時点ではまだまだ空き容量があり、軽くもよおす程度で、
十分に余裕を持って我慢できるラインです。
しかし、残尿感や頻尿、尿意をどうしても我慢できないなどの
切迫感を感じたら、何らかの病原があるのだと考えましょう。
また、本来ならば尿は途中で途切れることなく、
最後までスムーズに、かつ短時間で排出されます。
尿が途中で途切れてしまったり、勢いがなくチョロチョロ出るなど、
いつもとは違う異変を感じたときは、泌尿器科を受診しましょう。
残尿感を解消するためのアセスメント
排尿障害は様々な要因により発症するため、医師・看護師はもちろん、
患者自身でもチェックすべき項目は多岐にわたります。
自覚症状、問診
- いつから残尿感が始まったのか、時期・原因・きっかけなど
- どのような状況で、どんな風に失禁するのか
- 一日の排尿回数と量は適切か
- 一回ずつ排尿状況について確認する
- 頻尿、排尿困難、残尿感の有無
検査、治療
- 膀胱炎や尿路感染症を発症していないか
- 既往歴、手術歴、出産歴の把握
- 内服薬や合併症の影響ではないか
- 心理的状況、生活環境
- 排尿障害への対処法を指導
- 生理周期からみるホルモンバランス、閉経時期
- 体重の検査(肥満度をはかる)
- 下痢、便秘などの排便状況
検査項目
- 尿検査をする
- 排尿日誌をつける(1日の残尿量や排尿回数など、詳細な日記をつける)
- パッドテスト(尿漏れパッドを装着し、尿量の重さを量る)
- 何度も残尿測定をする
- レントゲン検査
- 尿流動態検査(前立腺の大きさや圧力、尿道閉鎖の度合いを調べる)
- 内視鏡検査を行う
以上のようなアセスメントに基づき、
抗生物質の投与と平行して生活習慣を改善するなど、
根本的な排尿トラブルの治療を目指しましょう。