尿は健康のバロメーターです。匂い、色、泡立ち、回数などで
体内に潜む異常を知らせてくれます。尿は自分の健康状態を確認するための
大切なサインのひとつなのです。

では、尿から普段とは違う臭いがする場合、体内では何が起こっているのでしょうか。

本来の尿はあまり匂わない

正常な尿のにおいはわずかな芳香臭(少しだけ香ばしい感じ)です。
飲んでいる薬や飲食物の影響で独特な匂いに変化することもありますが、
それは一時的なもの。すぐに平常どおりの臭いに戻ります。

尿=アンモニア臭というイメージを持たれている方も多いと思いますが、
本来ならば排尿直後の尿はほとんど匂わないのです。

一般的に、「尿やトイレが臭い、アンモニア臭がする」と私たちが感じている
現象は、実は空気中の細菌によって引き起こされています。

トイレの壁や床に飛び散った尿の飛沫のなかに含まれている尿素を、
空気中の細菌が時間をかけてゆっくりとアンモニアに分解しているのです。

つまり、我々がトイレで嗅いでいるアンモニア臭とは、体外に尿が排出されたのちに
細菌によって生成されたアンモニアであり、
排出直後の尿にアンモニアはほぼ含まれていない、ということです。

たとえば排尿後、トイレを流さずに放置した尿からは不快な刺激臭がし始めますが、
これも同じく細菌による尿素の分解が原因です。

排尿した直後なのにアンモニア臭がする場合

放置された尿がアンモニア臭を放つ理由は前述しましたが、もしも
排出したばかりの尿にツンとした刺激臭や悪臭を感じるなら、
何らかの病変を疑わねばなりません。

尿がアンモニア臭や特徴的な悪臭など放ち、それと同時に排尿時の痛みや
白濁、頻尿、残尿感などを感じるときは、
内臓のどこかが炎症を起こしている可能性があります。

その場合、特に疑われるのが膀胱炎です。

尿素をアンモニアと二酸化炭素に加水分解する酵素を
ウレアーゼと言いますが、このウレアーゼを活性化させる能力をもつ細菌が
膀胱内で繁殖して炎症をおこしている恐れがあります。

尿として排出されるはずだった尿素が、膀胱内でアンモニアに分解されてしまったため、
出した直後の尿からもアンモニア臭がするという仕組みです。

膀胱炎だけではなく、尿路感染症によって尿道、腎臓などでも
炎症を起こしている可能性がありますので、総合的に検査してもらうといいでしょう。

尿が臭くなる原因色々

・脱水症状

身体が脱水症状に陥っているときも尿の匂いは強くなります。

スポーツやサウナの後、また風邪を引いて発熱しているときや
真夏の暑い日に尿が匂う時は、体内の水分が不足している証拠です。

こまめな水分補給を心がけましょう。

・糖尿病

尿から独特の甘ったるい臭いがするときは
糖尿病の疑いがあります。血液中の血糖値が高くなると、
腎臓が血中のブドウ糖を尿と一緒に排出しようとするため頻尿や残尿感じを引き起こし、
膀胱炎と似たような症状が出ることが多いです。

・飲食物

ニンニクなどの臭いが強いものを食べたときも
尿の臭いが強くなります。

これは一時的なものですので、翌々日あたりにはすぐに解消されますが、
臭いが長期間続く場合は膀胱炎や他の病変を
疑ったほうがよいでしょう。

ビタミン剤などのサプリメントを飲むことによって
尿の臭いが強くなる事もありますが、この場合は臭いだけでなく色も変化していることが多いです。
しかし、何らかの病気によって腎機能が低下しているときや、
毛細血管の流れが非常に悪くなっている時にも
尿の色や臭いが変化するので、自己判断するのはやめましょう。

尿の臭いがきついと感じたら、すみやかに病院を受診しましょう。
普段よりも大めに水を飲むことで解消されるなどの
対処法もありますが、重大な内臓疾患を発症している場合もありますので、
くれぐれも油断は禁物です。