残尿感は病気のサイン

 年を取るとトイレに行く回数が増えるものです。若い頃は朝まで目が覚めることがなかったのに、年を取ると夜中にトイレに行く回数が増え、その都度睡眠が妨げられます。夜中に二度三度と起こされる人が多いようです。
 頻尿は何も夜間だけに限ったことではありません。昼間でもトイレに行った直後に尿が出切っていないような感覚が残る場合があります。そしてつい先ほど行ったトイレにまた行ってしまうのです。ひどい場合などは10分の一度というペースでトイレに立つこともあります。
 頻尿は汗をかかない冬場などではある程度は仕方のないことですが、いずれにせよ残尿感とそれにつながる頻尿が度を越すと重大な病気につながります。

女性に多い病気

 女性で残尿感が気になれば、まず膀胱炎の可能性が挙げられます。女性の場合男性より膀胱から排尿される尿道は短くなります。膀胱炎は膀胱に細菌が侵入することにより炎症を起こす病気です。尿道が短いため細菌が入りやすいのです。残尿感とそれに伴う頻尿、さらに排尿時に痛みを伴ったり、尿に血液が混ざったりすることもあります。
 次に尿路感染症が疑われます。これは性交渉によって細菌が侵入し、膀胱炎と同じような炎症を起こす病気です。若い人に多いという特徴があります。
 それら以外にも様々な病気の可能性が疑われます。一つに骨盤性器脱という膀胱が圧迫される病気もあります。いずれにせよ残尿感があり、頻尿につながるようだと泌尿器科などの早めの受診が望まれます。

男性に特有の病気

 男性にしかない臓器に前立腺があります。膀胱の真下で、取り巻いて尿道を形成しています。この前立腺が肥大化する病気が前立腺肥大症で、腺腫の一種です。悪性なら前立腺がんになるものです。この前立腺は年と共に肥大化することがあります。徐々に尿道を圧迫し、狭くなった尿道を尿は通りにくくなります。その結果、尿が出にくくなり十分に尿が出切らない残尿感につながるのです。初期の段階なら投薬での治療も可能ですが、悪化すると手術が必要になります。放っておくと尿が出なくなるという尿閉にもつながる怖い病気です。尿が出なくなると膀胱破裂にもつながります。高齢男性はこの病気に要注意です。前兆は残尿感、頻尿もそうですが、尿が出にくいとか尿が途中で途切れるということもあります。
 男性では他に前立腺炎という病気があります。これは尿道を通って入ってきた病原菌が前立腺で繁殖し炎症を起こすという病気です。20~30代の男性の多いという特徴があります。

男女ともに可能性のある病気

 最近テレビなどでよく聞くのが過活動膀胱です。40歳以上なら8人に1人がこの病気の可能性があるとも言われています。これは膀胱の周りの排尿筋が過敏に収縮し膀胱を圧迫します。その結果膀胱に溜めることができる尿が少なくなるのです。
 これ以外にも結石、糖尿病、膀胱がんなどです。いずれも放っておけない病気ですので、専門のお医者さんに受診することが必要です。

その他の頻尿

 頻尿はある条件がそろえば起こることがあります。頻尿と聞けば冬に起こりそうなイメージがありますが、夏の暑い日でも十分に可能性があります。夏の暑い日に一日クーラーの利いた部屋で過ごし、冷たい飲み物、特に利尿作用の強いコーヒーなどをたくさん飲んだ場合です。外で汗をかいていないので、体外に出る水分のほとんどが尿となって排出されます。しかも利尿作用があるコーヒーなどを飲んでいるとなおさらです。
 上記のような単発的なケースなどは特別深刻な病気とは言えませんが、残尿感や頻尿はこれまでに述べたような病気のサインである可能性が十分にあります。病気のサインは何も「痛み」だけではないのです。