加齢とともに増加していく女性の排尿トラブル。
特に20代から更年期の女性に多く見られる残尿感には
女性特有の病が潜んでいる場合もあります。
女性の場合、男性以上に羞恥心や自尊心が邪魔をして
泌尿器科の受診をためらってしまう傾向にありますが、
残尿感を放っておくと取り返しのつかない事態に発展してしまう事もあるので
注意が必要です。
今回は、女性の残尿感の主な原因をご紹介したいと思います。
膀胱炎によるもの
日本人女性の5人に1人は経験しているという膀胱炎。
膀胱炎とは、何らかのトラブルによって尿道口から
細菌が侵入し、膀胱内で炎症を起こしてしまうという病気です。
膀胱炎の代表的な症状は、
- 残尿感を覚える
- 頻尿になる(何度もトイレに行きたくなる)
- 排尿時にヒリヒリとした痛みを感じる。
- 尿が白く濁る、尿に血液が混じっている
などです。急性のもの、慢性のものとありますが、
どちらも症状は似通っています。
女性は尿道の長さが約4cm前後と男性と比べて短いため、
膣・肛門から尿道口が近く、細菌が侵入しやすい
という特徴があります。
たとえば大便のあとなど、おしりや陰部の拭き方が悪いと
尿道口付近に大腸菌を付着させてしまう恐れがあります。
また、生理中や性行為後に陰部を汚れたままにしておくことで
細菌が繁殖し、膀胱炎の引き金になることもあります。
尿路感染症によるもの
尿路感染症による残尿感も女性には多く見られます。
症状としては膀胱炎とよく似ているのですが、
こちらは全身に症状があらわれる事が多いです。
主な症状は
- 排尿痛がある
- 残尿感や頻尿
- 尿が濁る、血尿になる
- 蛋白尿が多い
- 37~38℃前後の熱が出る
- 腰や背中に痛みがある
- 吐き気がする、体重が増えない、食欲がない
などですが、高熱や吐き気が出た場合は
腎臓が炎症を起こしてる場合があり、早急な治療が必要です。
尿路とは、尿が作られて排出されるまでにたどる通路のことです。
具体的には腎臓、尿管、膀胱、尿道、尿道口の5つを指しています。
そして尿路感染症とは、尿の通路のどこかで炎症が起こっている状態を指します。
膀胱炎と同じく、原因は細菌感染であることが多いのですが、
前述したように女性は尿道が短いため、尿路感染症にかかりやすい
構造になっています。
細菌が腎臓まで到達し、腎臓で炎症を起こすと「腎盂腎炎(じんうじんえん)」、
膀胱で炎症を起こすと「膀胱炎」、
尿道で炎症を起こすと「尿道炎」と呼び名が変わりますが、
基本的に原因は同じです。
膀胱炎も尿路感染症も、一時的に症状が出る急性、病気が常態化してしまう
慢性に分けられますが、尿路感染症はさらに単純性、複雑性、淋菌性、非淋菌性など
様々な要因によって分類されます。
治療には抗生物質の投与が有効ですが、
いずれのケースも早急に原因を突き止めて、早期治療を心がけることが大切です。
骨盤性器脱
骨盤性器脱は、ホルモンバランスの乱れにより発症する
女性特有の病気です。
女性の骨盤内にある直腸・膀胱・子宮・膣などが垂れ下がり、
膣から体外へと露出してしまうことにより膀胱が圧迫され、
残尿感を感じることがあります(露出しない場合もあります)。
出産後や年配の女性に多く見られ、更年期障害の症状としてあらわれる事もあります。
月経や性行為
前述したように、月経や性行為の汚れを放置しておくと、細菌が尿道口から侵入しやすく
なってしまいます。菌が膀胱に侵入し、残尿感の原因となってしまうことがあります。
性行為のあとに陰部をよく洗っておくのはもちろん、
生理の時はこまめにナプキンを取り変え、下腹部を清潔に保ちましょう。
妊娠によるもの
妊娠により大きくなっていく子宮が膀胱を圧迫し、
頻尿や残尿感をもたらすことがあります。
また、妊娠することによって腎臓機能が活発になるため、
自然と尿量が増える事も原因のひとつです。
妊娠という身体の大きな変化自体がストレスとなって
残尿感を引き起こすこともありますし、プロゲステロン(女性ホルモンのひとつ。黄
体ホルモンとも呼ばれる)が増加することで
利尿作用をもたらすなど、妊娠すると複合的な要因が重なって残尿・頻尿が
生じます。
ちなみにプロゲステロンは排卵日あたりに分泌量が増えるので、妊娠していなくても
月経前症候群のひとつとして残尿感を感じる女性もいます。
冷え性
冷え性とは、自律神経の乱れや新陳代謝の低下によって
身体の一部の体温が下がってしまうことです。
冷え性による膀胱、尿管を収縮で残尿感を感じる方は、
しっかりと身体を温めるよう心がけましょう。
その他
上記はあくまでも「女性に多い残尿感」の代表例であり、
実際には様々な病気によって残尿感が引き起こされています。
膀胱結石、糖尿病、子宮筋腫、膀胱ガン、性病などの
恐ろしい病気が隠されていることもありますので、
勝手な自己判断はせず、病院でしっかり検査をすることをおすすめします。