残尿感を軽く見てはいけません。残尿感を感じても
適切な治療を受けず放置してしまったがために、
取り返しのつかない事態をまねき、命を落とすこともあるのです。
今回は、残尿感が体にどのような悪影響を及ぼすのか、
また残尿感を放置することでどのような病気を発症するのかをまとめました。
残尿が体に及ぼす悪影響
残尿感、頻尿、排尿痛、血尿などの異変を感じたら、
すぐに泌尿器科を受診して、早期治療に取り組むことが大切です。
たとえば、軽度の頻尿くらいの症状で済んでいたはずの膀胱炎が
適切な治療を行えなかったために重症化し、
人工透析、腎臓移植が必要になってしまったというケースもあります。
残尿の放置で人工透析に
初期の軽い膀胱炎であれば、水分をしっかり摂取しつつ
排尿回数を増やすことで、自然治癒が可能なケースもあります。
また、医師から処方される抗生物質の服用によって
しっかりと完治させることが可能です。
ですが、炎症を起こしている膀胱から、尿と細菌が腎臓へと逆流することによって
「腎盂腎炎」という命に関わる病気を引き起こしてしまうことがあるのです。
命に関わる腎盂腎炎
腎盂腎炎(じんうじんえん)とは、「腎盂」と呼ばれる
腎臓と尿管の接続部分が細菌感染することによって発症する病気です。
腎盂から腎臓全体にまで炎症が広がった場合、
- 38度以上の高熱
- 腰や背中が痛い、疲れやすい、倦怠感がある
- 頭痛や吐き気をもよおす
- 膀胱炎のような症状が出る
などの症状が出ますが、風邪などと間違えられやすいため注意が必要です。
腎盂腎炎から敗血症へ
腎盂腎炎は、膀胱炎などの尿路感染症と同じく再発しやすい病気です。
一度は完治させても繰り返し発症することで慢性化していくケースがあります。
慢性化した場合、腎臓で繁殖を続ける原因菌が血管に入り込み、
「敗血症」を引き起こす場合があります。
敗血症とは、細菌感染した血液が全身をめぐることによって起こる
全身性感染症のことです。重篤な多臓器不全を引き起こすため、
一分一秒を争う治療が必要とされます。
腎盂腎炎から人工透析へ
また、慢性化した腎盂腎炎によって、腎臓機能そのものが
どんどん低下していきます。
最終的には「血液をろ過して尿を作り出す」という
腎臓本来の役目すら果たせなくなってしまいます。
これが「腎不全」という状態です。
慢性腎不全になると、体内(おもに血液)から老廃物を
除去することができなくなり、体中に尿毒素が溜まります。
尿毒素の蓄積が進むとけいれんや意識障害などを起こし、生命の維持が非常に難しくなります。
延命のためには腎臓移植を行うか、もしくは血液をダイアライザーという
機械でろ過する人工透析のどちらかしか選択肢がありません。
人工透析は一生継続して行う必要がある上、
週に2~3回、1回あたり4~5時間もかかるため、
今までどおりの生活を送ることは不可能に近くなってしまいます。
その他の悪影響
上記では、残尿感や頻尿を放置することによって
死に至る危険性がある、ということを示唆しましたが、
ほかにも体への悪影響はたくさんあります。
多量の残尿状態が続くと、腎盂腎炎と同じく尿が腎臓へ逆流し、
水腎症を発症する恐れがあります。
水腎症とは、腎臓内が尿で満たされてしまうことで、
腎臓の機能不全を引き起こす病気です。
また、多量の残尿で膀胱が膨らみ続けていると、膀胱の筋肉が伸びきって
元に戻らなくなってしまいます。その結果、「溜めて出す」という膀胱本来の
機能が失われてしまうことがあります。
さらに多量の残尿によって夜間頻尿になれば、睡眠不足により体調不良を引き起こします。
それがストレスとなってさらに残尿感や頻尿を重症化させ、
日常生活に支障をきたしてしまうようになるのです。
頻尿や残尿感の大半は、膀胱炎、前立腺肥大、過活動膀胱、更年期障害などが
原因だと言われています。しかし、重篤な病気が潜んでいるサインとして
排尿トラブルが発生している場合もあるので注意が必要です。
たとえば膀胱結石、糖尿病、がん、骨盤臓器脱など、放置しておくと
最悪の事態を招く病気もありますので、違和感を感じたら
すぐに病院を受診し、早期発見につとめましょう。