「残尿」とは、「排尿直後に膀胱内に残っている尿」を指す言葉です。
残尿量の測定は、あらゆる排尿トラブルの検査、治療において
重要な役割を果たしますが、実は残尿量の数値に
明確なガイドラインが設定されているわけではありません。
今回は、「残尿」の定義や正常な残尿量の目安、
残尿感を引き起こす原因など、残尿についての基礎知識をまとめました。
「残尿」と「残尿量」の違い
「残尿」とは、「排尿したあとの膀胱内に残っている実際の尿量」という客観的な状況であり、
「残尿感」とは、「排尿後に尿がまだ残っているような気がする」という主観的な感覚です。
つまり、実際に尿が残っている、残っていないには関係なく
残尿感は引き起こされるものだということです。
例えば急性膀胱炎などでは、炎症による刺激で
膀胱の知覚神経が興奮しているため、
実際には尿が残っていないにも関わらず強い残尿感を感じます。
逆に、神経因性膀胱(何らかの神経障害が原因で、脳から送られる
尿意のサインを感じられなくなっている状態)の場合などは、
どれだけ尿が溜まっていても残尿感をまったく感じないことがあります。
正常な残尿量
排尿直後の膀胱には、数ml~15mlほど尿が残っているのが普通ですが、
一般的に残尿量が50mlを超えると治療の対象となります。
しかし、残尿量に関する明確なガイドラインは定められていません。
正常か異常かの判断は、基本的には医師にゆだねられています。
また、残尿量が15ml以下だった場合でも、
強い残尿感などを感じる場合は治療の対象となります。
残尿量には個人差があり、時間や時期、アルコールや水分の摂取量によっても
変動が大きいため、複数回測定する必要があります。
異常を感じたら自己判断はせず、医師に相談してみましょう。
残尿量の測定検査について
残尿測定検査は、すべての排尿トラブルの病態把握において
重要な検査と考えられています。
現在の残尿測定法は超音波を用いたエコー検査が主流ですが、
カテーテルを膀胱まで挿入し、導尿する場合もあります。
導尿法では、尿道から異物を挿入することよる疼痛、
感染症の危険などが指摘されていましたが、
エコー検査の普及により患者さんの精神的、肉体的苦痛が軽減されました。
また、排尿直後にすぐ測定することが重要とされるため、外来や病棟では
小型のポータブル式残尿測定器が使用されています。
残尿および残尿感を引き起こすおもな原因について
- 膀胱炎
膀胱内で細菌が繁殖することによって炎症を起こす、
細菌感染症の一種です。特に10代後半から40代の女性に多く見られ、
残尿感、排尿痛、頻尿、血尿、尿混濁などの症状が現れます。
- 過活動膀胱
膀胱が過敏に収縮し、切迫した尿意や失禁、頻尿などを引き起こす病気です。
加齢や前立腺肥大など、様々な原因によって発症します。
- 前立腺肥大
男性特有の病気です。肥大した前立腺が尿道を圧迫することにより、
残尿感や頻尿などの様々な排尿トラブルを引き起こします。
- 尿路感染症
尿路のどこかで細菌やカビ、ウイルスなどが繁殖し、
前立腺炎、膀胱炎、尿道炎、腎盂腎炎などを引き起こす病気です。
これらが疑われる場合、命に関わるほど重篤な症状に発展する恐れも
ありますので、早期に医療機関を受診しましょう。
- 心因性、ストレス性によるもの
ストレスなどの精神的な疲労や緊張感から、残尿感や頻尿などを発症します。
生活習慣の乱れから自律神経やホルモンバランスが乱れることも
大きな要因となっています。
この他にも、排尿をコントロールしている大脳・脊髄・末梢神経の損傷、
さらに腰椎椎間板ヘルニア、ガンや骨盤腔内手術の後遺症など、
様々な基礎疾患によって排尿トラブルを発症することがあります。
安易な自己判断はせず、違和感を感じたらすぐに泌尿器科を受診し、
病気の早期発見・早期治療につとめましょう。