「残尿測定器」とは、おなかの上からエコー(超音波)を当てることで膀胱内の残尿量を調べることができる装置です。

残尿量の検査だけではなく、前立腺がんや前立腺肥大症などの泌尿器疾患を発見、検査するためにも利用され、おもに泌尿器科でよく用いられています。

残尿とは

残尿とは、「排尿直後にまだ膀胱内に残っている尿のこと」を指す言葉です。
一般的に、残尿量が10ml以下であれば正常の範囲内だと言われています。

しかし、様々な病気によって膀胱の排泄機能が低下したり、
膀胱内の蓄尿容量が減少してしまうことで、残尿量は増加します。

多量の残尿を放置しておくと、長時間尿が停滞することによって
細菌感染のリスクが高まり、膀胱炎や泌尿器疾患を引き起こします。さらにその影響で
残尿感を感じやすくなったり、頻尿になったり、排泄痛を感じたりと、
日常生活にも影響を及ぼしてしまいます。

また、カルシウムやシュウ酸、尿酸、リン酸などの
尿路結石の原因となる物質も排泄されず膀胱内にとどまるため、
尿路結石の発生リスクも高まります。

残尿測定器とは

残尿測定器とは、エコー(超音波)を利用して残尿量を測定する機械です。
下腹部の体表、ちょうど膀胱の真上あたりにゼリーをぬり、
そこに測定器を密着させることで
通常のエコー検査と同じように残尿量を測定することができます。

ちなみに通常のエコー検査では、超音波を調べたい対象物に当て、
その反響を映像化することによって異常が箇所がないかを検査しています。
残尿測定器もそれと同じ原理を採用しています。

泌尿器科では残尿検査が大変重要かつ必須とされており、
様々な病気の発見のために残尿測定器が活用されています。

現在使われている代表的な残尿測定器には

  • ゆりりんシリーズ
  • リリアムシリーズ
  • BladderScanRBVI6100
  • BioCon CUBEscan 700 Bladder Scanner

などがありますが、どの測定器も
ポケットサイズ、手のひらサイズ、タブレットサイズなど
小さめのものばかりなので、臨床現場でも手軽に持ち運べるという利点があります。

残尿測定器のメリット

従来の残尿測定法は、尿道にカテーテルという細い管を挿入して
導尿し、採尿バッグに溜めて実測するというものでした。

しかし、その方法では手間も時間もかかる上、カテーテル挿入時に
尿道を傷つけて、出血や痛みを引き起こしてしまうリスクも伴います。

なによりカテーテルを挿入される患者さんの精神的苦痛、肉体的苦痛は
たいへん大きく、羞恥心や抵抗感などに苦しむ方も多い検査方法でした。

残尿測定器の大きなメリットは、カテーテルを必要とせず、
下腹部の皮膚の上からプローブと呼ばれる探針(小さな板のようなもの等)を
当てるだけで、膀胱内の残尿量を捉えられることです。
従来のように痛みも苦痛も生じません。

さらに残尿量を数値化することで、医師・看護師・患者間で
情報を共有でき、ひとりひとりの患者さんに合った
治療法の構築や健康指導などが可能になります。

特に手術・病気の経過観察、薬剤投与の効果などを調べるために
複数回の残尿検査を必要とするときは、非常に有益な装置です。
毎回カテーテルを装着する必要がないため
患者さんの負担を減らすことができ、かつ手軽に短時間で
日々変動する残尿量を測定できるため、治療方針の決定に重要な役割を果たします。

ちなみにカテーテルによる残尿検査は今でも行われており、
そちらの方がより正確に残尿量を測定できるそうです。また、
実測での検査なら尿に血液が混ざっているかどうかなどの異常も
注視できますが、今の所エコー診断では出血の有無まで確認できません。

残尿測定器は、現在の一時的な残尿量を調べることもできますし、
定時ごとに継続して残尿量の変化を測り続けることもできます。

長時間測定し続ける場合でも、プローブを皮膚の表面に固定して
おくだけなので、患者さんへの負担はほとんどありません。

残尿測定器の活用

残尿、あるいは残尿感を引き起こす代表的な病気といえば
膀胱炎ですが、その他の重大な病気の治療やケアに対しても
残尿測定器は効果を発揮します。

たとえば前立腺肥大症や脊髄損傷、脳梗塞、糖尿病など、
脳からの命令が上手く伝わらず排尿困難になる病気では、
普段の自分の残尿量がどのくらいかを測定器で把握しておくことで
失禁などを防ぐことができます。

上記のように、排尿命令が伝わらない神経因性膀胱という状態は、
残尿による感染症、腎不全を引き起こして
命に関わる恐れもあります。
残尿測定器でこまめに尿量を確かめ、定期的に排尿を促すことが大切です。