男性の排尿トラブルは加齢とともに増加していくのが一般的です。
しかし最近では、20代、30代といった若年層の男性にも頻尿や残尿感で悩む方が急増しています。
その大きな原因のひとつとなっている病気が「前立腺炎」です。

今回は、20~30代男性の排尿トラブルの原因として大きな割合を占めている「前立腺炎」の
原因、症状、治療法、予防法などについてまとめました。

前立腺炎とは

前立腺炎とは、おもに大腸菌やクラミジアなどの細菌によって前立腺が炎症を起こす病気です。

男性の5割ほどが一生に一度は経験すると言われるほどメジャーな病気であり、
最も発症率が高い年代が20~30代となっています。

前立腺炎は「急性」と「慢性」のふたつに大きく分類されます。
急性は一時的な症状であり、治療も短期間で済みますが、慢性は症状・治療期間ともに長期化する傾向があります。

・急性前立腺炎

おもに尿道から侵入した細菌が前立腺で炎症を引き起こす病気です。

炎症によって前立腺が腫れ上がったり、充血して膨張したりすることで、
前立腺周辺にある泌尿器官にも悪影響を及ぼします。

また、膀胱結石の影響によって発症したり、免疫力が低下している時に
血管やリンパ管を通して体内から細菌に感染することもあります。

急性前立腺炎のおもな症状は下記の通りです。

  • 発熱、倦怠感
  • 排尿痛
  • 頻尿
  • 尿閉(尿が出なくなること)
  • 残尿感
  • 前立腺の痛み、下腹部の不快感など
  • 性行痛がある
  • 尿や精液に血液が混ざる
  • 全身の関節痛、筋肉痛

急性前立腺炎を放置しておくと、精巣上体炎や敗血症などの重篤な全身症状を引き起こす場合もありますので、
排尿に違和感を感じたらすぐに泌尿器科を受診しましょう。

・慢性前立腺炎

前立腺が慢性的に炎症を起こしている状態です。

急性前立腺炎と同じく、頻尿、残尿感、尿閉、排尿痛、射精痛、下腹部の痛みや不快感などの
症状があらわれます。局所のかゆみや腰痛、背中の痛みなども併発することがあります。

慢性前立腺炎には細菌性のものと非細菌性のものがありますが、
非細菌性の場合は原因を特定できないケースが多く、治療が長引く場合があります。

非細菌性慢性前立腺炎の詳しい原因はまだ解明されていません。
しかし、血行不良や疲労・ストレスの蓄積などによる男性ホルモンと自律神経の乱れが
発症に大きく関わっていると考えられています。

たとえば長時間にわたるデスクワークをしている方、バスやタクシーのドライバーなど、
運動不足に陥りやすい方に発症が多くみられる傾向がありますが、
これは座りっぱなしによる骨盤内のうっ血や、前立腺周辺にある骨盤底筋の緊張によって
血行が悪化するからだと言われています。

前立腺炎の治療法

まずは泌尿器科を受診しましょう。尿路感染症、性感染症、膀胱がんなどは
前立腺炎と症状が似ていますので、安易な自己判断は禁物です。

急性前立腺炎および慢性前立腺炎は、どちらも薬物療法が主体です。
検査によって前立腺液の中に細菌を確認できれば、抗生剤、抗炎症剤などを服用します。
非細菌性であれば、排尿促進剤や漢方薬、生薬などが用いて症状の緩和をはかります。

予防法、対処法

  • 規則正しい生活を心がけ、免疫力を低下させないようにすることが最も大切です。
    疲労やストレスを溜めない生活習慣を心掛けましょう。
  • 血行不良を改善することも大切です。運動不足、冷たい物の摂り過ぎ、喫煙、体を締め付ける
    タイトな服装は血流を悪化させます。血流の促進には、入浴時にしっかりと体を温めること、
    水分をしっかり補給すること、骨盤底筋を鍛えることなどが効果的です。
  • アルコールは前立腺を充血させるため、前立腺炎の症状を悪化させます。飲酒も極力控えるようにしましょう。
  • 肉、卵、乳製品などの動物性脂肪は前立腺を肥大させる作用があります。治療中は控えるようにしましょう。
  • 細菌性の前立腺炎の疑いがある場合は、性行為を控えましょう。パートナーにも感染させてしまう恐れがあります。
  • 亜鉛は男性ホルモンのバランスを整えるために欠かせないミネラルです。
  • 牡蠣、牛肉、レバーなどに豊富に含まれていますので、適度に摂取しましょう。
  • 市販の漢方薬やノコギリヤシサプリメントを利用する手もありますが、医師に相談してからしてから利用してください。
  • デスクワークをしている方、ドライバーの方などは、最低でも1時間に1回は席を立ち、
    軽く体を動かすなどの休憩をしましょう。
  • 長時間にわたるパソコンやスマホの使用で同じ姿勢を長く続けたり、
    ブルーライトを浴び続けることにより、男性ホルモンや自律神経のバランスが乱れやすくなります。
    こまめに休憩を取りながらの作業を心掛けましょう。