残尿感は症状としてはありふれていますが、症状を訴える本人としては恥ずかしさもあり気軽に受診しにくいと思います。
今回は、残尿を伴う泌尿器科疾患(前立腺肥大症、神経因性膀胱)について紹介しようと思います。
治療も生活習慣の改善(カフェインの制限)などに始まり、薬物治療が主体となります。
まず前立腺肥大症の薬物治療ですが、大きく分けてα1遮断薬(ハルナール、ユリーフ、フリバスなど)やPDE5阻害薬(ザルティア)がメインで使用されます。
従来から使用されたα1遮断薬は前立腺を広げることで排尿障害(おしっこが出にくい症状)を改善し、残尿感を改善することができます。血管を広げる作用もあり、起立性低血圧(起立時に血圧が低下する)が副作用の代表例です。ただし、これは血管に作用する働きが弱い薬(ハルナール、ユリーフ)ですとかなり稀です。その他射精障害も知られていますので、気になる方は医師・薬剤師に相談するとよいでしょう。
PDE5阻害薬であるザルティアは効く仕組みはバイアグラと同じです。ですので心臓病を持っていて硝酸薬を使用している方には使用できません。
発売されて間もない薬ですし、現段階では専門の医師でないと処方できません。
次に、5α還元酵素を抑えることで男性ホルモン合成を抑制するお薬がアボルブ(デュタステリド)です。
前立腺は男性ホルモンにより大きくなりますので、アボルブにより前立腺を縮小することで残尿感や排尿障害を改善することができます。
α1遮断薬やPED5阻害薬と比べると作用を発揮するまでに時間がかかります。
アボルブは利きやすいタイプの患者もわかっていて、前立腺が大きい人に効きやすいことが知られています。具体的には前立腺の容積が30mL以上だと治療効果が優れているというデータもあります。
症状や患者さんのタイプによっては複数を組み合わせることもありますのでよく医師・薬剤師と相談して治療するとよいでしょう。
ここまで紹介したα1遮断薬、PDE5阻害薬、5α還元酵素阻害薬は仕組みの違いはあるにせよ、前立腺に作用することは共通しています。
前立腺肥大によりおしっこが出にくくなって、膀胱が頑張っておしっこを出そうと収縮する、すなわち過活動膀胱を合併するかたも中にはいます。
そのような場合、抗コリン薬(ベシケア、バップフォーなど)を併用することがあります。
このお薬は、膀胱に存在するアセチルコリン受容体にアセチルコリンが結合することを阻害し、膀胱が動きにくくするお薬です。
作用が強く出すぎると逆におしっこが出にくくなる(尿閉)という症状もありえますので併用する方は症状をしっかりと確認することが大切です。
また、アセチルコリン受容体は腸管の動きや唾液の分泌にも関与するので、便秘や口渇が副作用として出てくる可能性があります。
実を言うと抗コリン薬は膀胱のお薬としてだけではなく、風邪薬や花粉症のお薬としても使用されます。ですので、稀に風邪薬とかでも上記の尿閉が出てくる方もいます。
お薬の飲み合わせも決して馬鹿になりませんので事前に相談しておくとよいでしょう。
神経因性膀胱は加齢、脳梗塞、パーキンソン病などの神経が関与する病気で膀胱が動かしにくくなる病気です。従って、膀胱を動かしやすくするお薬であるコリンエステラーゼ阻害剤(ウブレチドなど)を使用します。アセチルコリンを分解するコリンエステラーゼをの働きをブロックすることで、アセチルコリンの量を増やすことで膀胱の動きを良くするお薬です。先ほど紹介した抗コリン薬とは真逆の効果です。副作用も当然真逆で、下痢などが主な副作用です。腎臓が悪いと減量が必要ですので、腎臓病を持っている方は必ず主治医に伝えるとよいでしょう。