「蟻の門渡り(アリノトワタリ)」とは、陰部と肛門の間、いわゆる会陰部を指す言葉です。

読み方はどちらも「ありのとわたり」ですが、
「門渡り」と表記することで女性の膣から肛門までの部分を指し、
「戸渡り」と表記することで男性の肛門から陰嚢までの部分を
表現するそうです。

江戸時代の艶本にも「まるで蟻が門渡り(細い通路を渡ること)を
しているような狭い場所」と書かれたことで有名な会陰ですが、
最近では残尿トラブルの解消法として
よく名前を聞くようになりました。

会陰と残尿感の解消には、
一体どのような関係性があるのでしょうか。

男性は蟻の門渡りを押すことで残尿感を解消できるのか?

排尿を終えた直後なのに「まだ膀胱内に尿が残っているような気がする、
なんだかスッキリしない」という不快感を覚える男性は
年齢とともに増加します。

それがいわゆる「残尿感」を感じている状態なのですが、
問題なのは残尿「感」だけではなく、
実際に尿漏れを起こし、ズボンや下着を汚してしまうケースがあることです。

用を足し終え、チャックを上げた直後に尿道から尿がこぼれ落ち、
ズボンや下着に付着してシミを作ってしまう。これは非常に不快なトラブルで、
男性のプライドや社会的地位をも傷つけかねません。

しかも外出中にそれが起こってしまったり、スーツなどの高価な服を着ている時なら
もう気が気ではありませんよね。

このような症状を「排尿後尿滴下」といい、中高年以上の男性に多くみられる
排尿トラブルです。
50歳以上の男性の3~4割の方が経験するという調査結果もあり、決して特殊な
現象ではありません。

排尿後尿滴下の原因

排尿後尿滴下の原因のひとつは、膀胱の筋肉が弱って
伸び縮みする弾力性を失い、尿をとどめておけなくなってしまう事です。

膀胱内にとどめておけなくなった尿が尿道をつたい、
自分の意志とは関係なく体外に排出されてしまうので、気合でどうにかなるものではありません。

また、膀胱だけではなく、尿道を取り囲む球部海綿体筋や
陰茎の付け根の筋肉が衰えることも尿漏れにつながります。

男性は陰茎の筋肉を締めたり緩めたりすることで、尿意を我慢する・排尿するなどの
コントロールを行っています。調節弁のような役割を果たすそれらの筋肉が
加齢によって衰退し、尿道をしっかり閉じる事ができなくなってしまうのです。

さらに男性は尿道が長いため、自分では尿を出し切ったつもりでも、
尿道内にはまだまだ尿が残っていることがあります。
それらが前述と同じく尿道内をつたい流れ落ちてくることも、
尿漏れの大きな原因となっています。

男性の残尿感・頻尿・尿漏れの対処法

医師会も推奨している男性の残尿漏れ対策は、
「蟻の門渡り」を指で押すことです。

具体的には、睾丸の奥、股の付け根を尿道に向かって押し、
尿道内・膀胱内に残っている尿をすべて絞り出す、というイメージです。

陰のうの裏側、陰茎根部から外尿道口にかけての会陰を
指先でしごくことで、排尿後尿滴下はほとんど改善されるらしく、
排尿後に指圧を行っている男性はとても多いようです。

ただし、この方法で劇的に効果を感じる方もいれば、
尿漏れがまったく解消されないという方もいらっしゃいます。
しかも指で押すことによりますます筋力が衰え、さらに残尿漏れが重症化する
恐れがあるという指摘もされており、一筋縄ではいかない残尿感解消法のようです。

前立腺肥大症

男性の残尿感や尿漏れには「前立腺肥大症」が大きく関わっていることもあります。

前立腺は、加齢とともに肥大化していく組織です。
特に50代から大きく膨らみ始めることが多く、
60代では60%もの男性に前立腺肥大が認められます。

前立腺が肥大化する原因はまだ解明されていません。
男性ホルモンの作用によるものだという事だけは確かなのですが、
肥大の予防法などは不明なままです。

また、男性の残尿漏れには尿道狭窄、脳卒中、パーキンソン病などの
恐ろしい病気が隠されている場合もあります。

蟻の門渡りを押しても尿漏れが改善されないときは、
残尿感や尿漏れの原因をしっかりと把握して治療するため、泌尿器科を受診しましょう。